30sec Memo
👉クロスプラットフォームの利便性より、特定OSでの最高の体験を追求することが、熱心なファンを生む要因になり得る。
👉単にサポート窓口をつくるのではなく、コミュニティを作ることで、製品改善のエンジンと口コミの発生源という強力な武器が手に入る。
👉プロダクトの価値を信じ、関連分野のインフルエンサーに粘り強くアプローチする。また、関連するインフルエンサーの発信に積極的にリアクションし、普段から関係を築くおくことも大事。
what's service
Repo Promptは、LLMを使ったソフトウェア開発の効率を高めるmacOS向けネイティブアプリ。開発者は、どのファイルをAIに読み込ませるかをGUIで細かく指定でき、AIが提案したコードの変更は差分(diff)として表示され、ワンクリックでコードベースに適用可能。OpenAI、Claude、Geminiなど多様なAIモデルに対応し、ユーザー自身のAPIキーで直接通信するためプライバシーも確保される。クリップボード経由でWeb UIにも対応し、オフラインでもプロンプト構築ツールとして機能する。
大規模なコンテキストウィンドウを持つAIモデルを利用する際、複数のファイルの内容を手動でWeb UIにコピー&ペーストする作業は非常に煩雑で時間がかかる。また、不要な情報を含めるとAIの回答精度が落ち、APIコストも増大する。さらに、AIが生成したコードを手作業で元のファイルに反映させる作業は、ミスを誘発しやすく非効率だった。
直感的なGUIベースのファイルピッカーを提供し、開発者は必要なファイルコンテキストだけを迅速かつ正確に選択できる。独自の差分適用システムにより、AIは変更箇所のみを出力すればよく、ユーザーはワンクリックで安全に変更をマージできる。これにより、開発者の時間とAPIコストの両方が大幅に削減され、AI活用の手間から解放される。
More Info
売上はどのくらい?
月収150万円以上(2025年6月時点)
ターゲットユーザーは?
macOSを使用するソフトウェア開発者やプログラマー。特に、Claude OpusやGemini Proといった大規模コンテキストウィンドウを持つ最新のAIを積極的に活用し、生産性を最大化したいと考えている「パワーユーザー」層。既存のIDEを変更したくない開発者にも適している。
マネタイズ方法は?
フリーミアムモデルを採用。
Free Tier: 基本機能を提供する無料プラン。API利用にはトークン数制限あり。
Pro - Subscription: 月額($14.99)または年額($149)のサブスクリプション。全機能が利用可能。
Pro - Buy-to-own: ライフタイムライセンス($219)。1年間の無料アップデートが含まれる。
創業者について教えて
創業者のEric Provencher氏は、Unityの元Staff XR Research Scientist/Engineerで、XRインタラクションツールキット(XRI)の主要開発者の一人。特にハンドトラッキングなど、人間とデジタル世界間の自然なインターフェース(NUI)設計を専門としており、その分野で特許も保有している。彼の「インタラクションデザイン」に関する深い知見が、Repo Promptの卓越したUXに反映されている。
なんで成功したの?
成功のセンターピンは、創業者が「コンテキストエンジニアリング」と呼ぶ概念を、卓越したUXで製品化した点にある。Repo Promptは、AIの性能はインプットされるコンテキストの質に依存するという深い洞察に基づいて、「開発者がAIをより賢く使えるようにする」ことに焦点を当てた。
彼が培ってきた「ユーザーが意識することなく直感的に操作できる体験」を設計する哲学を、AIとの対話に応用し、Web UIでの面倒なコピペ作業を、洗練されたGUIでのファイル選択とワンクリックでの差分適用に置き換えることで、競合にはない圧倒的な使いやすさを実現した。この優れたUXが、コールドDMやReddit投稿などの地道な宣伝活動と掛け合わさり、コミュニティでの熱狂的な支持と、インフルエンサーによる自然な紹介を生み出す原動力となった。
Road map
創業者自身の趣味のゲーム開発プロジェクトで、Claude Opus 3の広大なコンテキストウィンドウを活用する際の「計り知れない苦痛と時間の無駄」を解決するため、開発を決意した。
週末を利用し、Electronでプロトタイプを開発。ファイル選択とフィルタリングというコア機能に絞ったシンプルなツールだった。
Electronのパフォーマンスに不満を感じ、最高のUXを追求するためSwiftを学び、macOSネイティブアプリとしてゼロから再開発する決断を下した。
Redditのサブレディットでデモ動画を投稿し、TestFlight経由でテスターを募集。参加した初期ユーザーを中心にDiscordコミュニティを設立し、活発なフィードバックループを構築した。
一時成長は停滞したが、OpenAIのo1 Proモデルが登場した際、それを使いこなすための最適なツールとしてRepo Promptが注目を浴びた。
AIコーディング分野のインフルエンサー、McKay Wrigley氏がYouTube動画でRepo Promptを「必須ツール」として紹介。これが起爆剤となり、認知度が飛躍的に向上した。
持続可能性のために有料化(ライフタイムライセンス導入)を決意。一部からの反発に対し、無料ティアの制限を緩和し、新たに月額課金オプションを追加する柔軟な対応で批判を沈静化させた。
有料化から約3ヶ月でMRRが1万ドルを突破。事業が安定軌道に乗ったことを受け、Unityでの本業を辞め、Repo Promptの開発に専念することを決意した。
Marketing
開発初期に/r/ChatGPTCodingなどの専門的なサブレディットで、アプリのデモ動画を具体的に示しながら投稿し、無料のベータテスターを募集した。
プロダクトのターゲット層である開発者から直接初期ユーザーを獲得し、熱心なフィードバックを得ることに成功。これが後のDiscordコミュニティの基盤となった。
初期ユーザーとの直接的な対話チャネルとしてDiscordサーバーを設立。ユーザーのフィードバックや問題点を迅速に製品改善に反映させた。
熱心なパワーユーザーからなる強力なコミュニティを形成。製品の方向性を決定づけるフィードバック源となり、自然な口コミの発生基盤となった。
Twitter(現X)でAIコーディング関連のコンテンツを制作しているインフルエンサーに対し、地道にコールドDMを送り、製品を試してもらうよう働きかけた。
インフルエンサーのRay Fernando氏のライブストリームに出演する機会を得て、最初の大きな外部露出を獲得した。
インフルエンサーのMcKay Wrigley氏が、自身のo1-Proワークフローを紹介するYouTube動画でRepo Promptを「必須ツール」として絶賛した。
特定の高価値なユースケースにおけるキラーアプリとしての評価が確立され、認知度が飛躍的に向上。事業の見通しが劇的に好転する最大の転機となった。
創業者自身がYouTubeチャンネルで、Repo Promptのチュートリアルや、Repo Promptを使ってRepo Prompt自体を開発する様子(Dogfooding)を公開した。
製品の透明性と信頼性を高め、潜在顧客に具体的な利用イメージを提供。創業者自身の技術力と製品への自信を示すことに繋がった。
idea
創業者であるEric Provencher氏が、Apple Vision Pro向けの趣味のゲームプロジェクト「Bomb Squad」を開発していた際に生まれた。当時最新だったClaude Opus 3の200kトークンという広大なコンテキストウィンドウを有効活用しようとしたが、複数のファイルをClaudeのWeb UIに渡し、生成された編集内容を自身のコードに適用するプロセスが「計り知れない苦痛と時間の無駄」だった。この個人的で深刻な「痛み」を解決するために、Repo Promptは開発された。
自身の課題解決(Scratch your own itch)から出発することが原点。しかし、それに留まらず、常に「ユーザーの痛み」に耳を傾けることが重要。初期段階からDiscordなどのコミュニティを設立し、テスターからのフィードバックを積極的に収集して製品を改善した。また、MCPサーバーのような最新のAI技術トレンドに常にアンテナを張り、それらを自身の製品にどう統合できるかを模索する姿勢も、新しい価値創造の機会を見出す上で重要である。
develop
最初は、自身の課題を解決するための最小限の機能を持つプロトタイプ(MVP)を、クロスプラットフォーム技術のElectronで迅速に開発。
MVPで製品価値を検証した後、パフォーマンスとユーザー体験を最優先するため、Swiftを用いたmacOSネイティブアプリへと大胆にピボット(方向転換)した。その後は、TestFlightとDiscordを通じてユーザーからのフィードバックを継続的に製品に反映させる、アジャイルな開発サイクルを実践している。ソロ開発者のため、リソースを一つのプラットフォーム(macOS)に集中し、最高の体験を提供することを選択した。
Tech Stack
言語/フレームワーク: Swift, SwiftUI, AppKit
プラットフォーム: macOS
初期プロトタイプ: Electron