30sec Memo
👉広告費が高額になりがちなC2Cサービスは、「ニッチ × SNS発信」戦略で初期の広告費を回避する
👉自身の物語と製品を一体化させ、ファンを初期ユーザーに転換。個人の発信力がそのままプロダクトの信頼性と推進力になる。
👉実装にユーザー間決済が含まれる、やや難度が高いC2Cプラットフォームの構築もAIを駆使すれば個人でも短期で作成することが可能。
what's service
Emporは、カナダのマギル大学の学生限定で利用できるC2C(個人間取引)マーケットプレイスのモバイルアプリ。大学のメールアドレスによる認証を必須とすることで、コミュニティ内の高い安全性を担保している。これにより、Facebook Marketplaceなどの既存プラットフォームが抱える「取引相手への信頼性の欠如」や「情報のノイズ」といった課題を解決。学生が教科書、家具、衣類などをキャンパス内で安心して、かつ手軽に売買できるエコシステムを提供している。
Facebook Marketplaceのような汎用C2Cプラットフォームは、取引相手が誰か分からず安全面に不安がある。また、学生にとって不要な情報や広告が多く、目的の物を探しにくい。さらに、交渉や決済が別々のアプリで行われるなど、取引プロセスが煩雑だった。
大学のメールアドレスでユーザーを学生に限定し、身元が保証された安全な取引環境を提供。プラットフォーム上の情報を学生向けに最適化し、Tinder風のUIやパーソナライズ機能で目的の商品を効率的に見つけられるようにした。アプリ内チャットと決済機能で、取引の全プロセスをアプリ内で完結させるワンストップ体験を実現。
More Info
売上はどのくらい?
月収15,000円以上
ターゲットユーザーは?
初期ターゲットは「マギル大学の学生」に限定。これは、ネットワーク効果の最大化、口コミの促進、物流の簡素化、ペルソナの明確化を意図したハイパーニッチ戦略。特に、学期末の引越しシーズンでモノの売買ニーズが高まる学生を狙い撃ちした。
マネタイズ方法は?
取引手数料モデルを採用。プラットフォーム上で取引が成立した際、取引額の一部を手数料として徴収している。
創業者について教えて
創業者・開発者はErik Cupsa氏。カナダの名門マギル大学でコンピュータ工学を専攻する学生。在学中にAutodeskやAmazonでソフトウェアエンジニアのインターンシップを経験。自身の開発プロセスやキャリア形成について発信するYouTube/TikTokチャンネル「@SWErikCodes」は数万人のフォロワーを持ち、エンジニア、起業家、コンテンツクリエイターという3つの顔を持つ。
なんで成功したの?
成功の大きな要因は、「信頼性の確保」と「一体感のあるコミュニティづくり」をうまく組み合わせた点にある。大学のメールアドレスで認証するというシンプルな仕組みで、参加者が同じ大学の学生であることを保証し、C2Cサービスで最も大きな課題である「信頼の不安」を解消した。
また、C2Cサービスは利用者が集まらないと価値を発揮しにくいため、立ち上げ当初は多くのサービスが高額な広告費をかけがち。しかしこのサービスでは、あえて特定の大学にしぼって展開することで、口コミが広がりやすくなり、自然とユーザーが集まる仕組みをつくった。
さらに、ただの取引ツールとしてではなく、学生同士がつながれる「コミュニティ」としての価値を重視した点も特徴的。サービス開始直後に追加されたソーシャル機能がそれを象徴しており、「信頼できる相手」と「活発なやり取り」が生まれる流れをつくった。このような仕組みが、他のサービスには簡単に真似できない強みになっている。
Road map
創業者自身の学生としての原体験からアイデアが生まれる。マギル大学のビジネスコンペで、学際的なチーム「Team Empor」として「学生限定マーケットプレイス」のアイデアを提案し、優勝。アイデアの初期検証に成功した。
大学のスタートアップ支援プログラム「Lean Dobson startup program」に参加。メンターシップを受け、アイデアを具体的な事業計画へと磨き上げた。
中心人物のErik Cupsa氏が、インターンシップの傍ら、90日間という短期間でモバイルアプリのMVP(Minimum Viable Product)をゼロから構築。AIコーディングツールなども活用し、驚異的なスピードで開発を進めた。
マギル大学の学期末(4月30日終了)に合わせてローンチ。学生の引越しに伴う不用品の売買ニーズがピークに達するタイミングを的確に捉え、初期の爆発的な利用を誘発した。
ローンチ後わずか1週間でユーザー数866人、出品数366件を達成。ターゲットを絞ったことによる口コミ効果が最大限に機能した。
ローンチ初月から取引手数料による収益化に成功。4月23日時点で取引総額は1,600カナダドル(約24万円)に達し、創業者は100カナダドル(約15,000円)以上の収益を得た。
ローンチからわずか1週間後に、Twitter風のソーシャル機能「Community Tab」をリリース。単なる取引ツールから、学生間の交流ハブへと進化させることで、LTV向上を図る戦略的な一手だった。
Marketing
創業者Erik Cupsa氏が自身のYouTubeとTikTokチャンネル「@SWErikCodes」で、90日間の開発風景、バグ修正の日常、App Store承認の喜びなど、開発プロセスを赤裸々に発信した。
「FAANGインターン経験を持つ学生が夢を追う」という物語が共感を呼び、築き上げた個人のファン層をそのままサービスの初期ユーザーへと転換することに成功。広告費ゼロで熱狂的なファンを獲得した。
ターゲットを「マギル大学の学生」という極めて狭い範囲に意図的に限定してサービスを開始した。
閉鎖的で情報伝達の速いコミュニティ内で、オーガニックな口コミが急速に拡散。ユーザー密度が短期的に高まり、マーケットプレイスの価値の源泉であるネットワーク効果を早期に確立できた。
取引機能だけでなく、学生同士が交流できる「コミュニティ機能」をローンチ直後に追加した。
物を売買する目的がない日でもアプリを開く理由を提供し、エンゲージメントとリテンションを高めた。これにより、ユーザーの離脱率を下げ、LTV(顧客生涯価値)の向上を目指した。
idea
アイデアの源泉は、創業者Erik Cupsa氏自身がマギル大学の学生として、既存のC2Cプラットフォームに感じていた不便さ、不安、非効率性という原体験にある。この個人的な課題意識を、学内のビジネスコンペやスタートアップ支援プログラムを通じて客観的に検証し、事業計画へと昇華させた。また、ローンチ直後に追加した「コミュニティ機能」は、「大学生活の本質はコミュニティにある」という深い洞察から生まれたもので、表層的なニーズだけでなく、学生の深層的な欲求に応えようとする姿勢が反映されている。
まず、創業者自身が属するコミュニティ(今回の場合は大学)が抱える、自分自身の切実な課題(「自分の不便を解消する」)から始めること。そして、その個人的なアイデアを、ユーザーへのヒアリングやビジネスコンペやインキュベーションプログラムなどを活用して客観的に検証し、ビジネスプランへと磨き上げることが重要である。
develop
開発は、リーンスタートアップの「構築-計測-学習」ループを高速で回すアプローチを実践。まず、中核価値である「学生が安全に商品を売買できる」機能に絞ったMVPを90日間で開発。ローンチ後、ユーザー動向を分析し、わずか1週間で次の施策(コミュニティ機能)を実装するという迅速なイテレーションを行った。
Tech Stack
・フロントエンド: React Native, Expo Go
・バックエンド: Spring Boot (Java)
・データベース/BaaS: Supabase
・決済: Stripe